Sugar Ache


その瞬間の甘い感覚がまだ残ってる。

なのに、その時僕の心を奪った景色が思い出せないのは何故だろう?



そう、溶けてしまったんだ。

まるで粉砂糖のように。



僕は光をつかまえることにただ夢中で

自分の手に何が握られていたかなんて考えもしなかった。



僕のつかまえた幸福は、指の間をすり抜けて、闇の中へと溶け出した。

あの日の夕日の色も、君の笑顔も、僕の手の中を窮屈だとののしった。



どうして、今まで開いて見てみようとしなかったんだろう?

どうして、今までその温かさを感じてみようとしなかったんだろう?



ねぇ、どうして僕はまた新しい光をつかまえようとするんだろう?



どうせ何も見やしないのに。

幸福な瞬間だってどうせ粉砂糖のように溶けてしまうのに。

残った甘い痛みに悩まされるだけなのに。


fin.



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