軌道
心の中に闇があるのがわかるんだ。
感じるんだ。そこを星が流れていくこと。
落ちるでも昇るでもなく、ただただ無力に進むんだ。
地平線を横切り、朝焼けにすら光の尾を投げ掛けて、永く永く。
いつか自分を飲み干す、絶対的な引力を待ちわびながら。
せめてその日まで、すれ違う未完全な星々に心をえぐりつくされぬよう、静かに祈りながら。
優しき光をたたえた星よ。
僕は憧れをこめて君を見つめる。
一体どれだけの人間が君をこうして見上げただろう。
そして、どれだけの人間が君に励まされたことだろう。
だけど、悲しき星よ。
ある時君はそんな僕にこう問い掛けた。
「私は、幸せそう?」
僕は何も言えなかったけど、その答えを知ってる。
だからこそ、こうして見上げるんだ。
永遠を滑りゆく君を・・・。
fin.