雨の日の幻
色鮮やかに雨をはじく傘達。
その中に薄れゆく君。
雨にけぶる踏切に阻まれ
立ち尽くした僕は遠ざかる人の群れを見ていた。
君を見ていたのか、君の姿を遮る雨を見ていたのか
今目の前を曇らせ頬を伝っていくのは何なのか
それすらも分からないまま、優しく煌く赤が視界の中の君を消して行き・・・
僕はたまらず目を伏せた。
声を掛けて君が振り返れば幻なんかじゃなくなったかもしれないのに
こんなジレンマは何度目だろう。
あの日、夢を見たくて自分に自分で魔法をかけた。
君の笑顔も
声も
眼差しも
全ては幻
だけどそれは何より優しい魔法だった。
この雨音が止んで空に虹が架かる頃
ゆっくりと目を開けて踏み出せばいい。
君がそこにいてもいなくても。
fin.